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 特集  21世紀京都の名盤  Vol.1

21世紀京都の名盤 vol.1 21st CENTURY MUSIC in KYOTO
[後半] 境界線上の音楽、または境界を融和させる音楽 対談:糸魚健一 × 見増勇介 × 原摩利彦 × &ART編集部 photo by Yoshikazu Inoue 対談場所:CLUB METRO(クラブメトロ)

"21世紀京都の名盤"は2001年以降にリリースされた「お薦めしたい」「名盤だと思う」音源を、アーティストや音楽関係者とピックアップし、情報をアーカイブ化していく連続企画だ。企画の狙いは"現在リアルタイムに活動しているアーティストが作り出した優れた作品"を、商業的な観点とは関係ない、純粋な作品性で評価する機会を作ることにある。

また、音源をアーカイブ化するだけでなく、ピックアップした音源について推薦者による対談を行い、推薦理由やその音源の時代背景について語り、記事として掲載していく(今後メンバーを変えて継続予定)。

京都には独自の視点からオリジナリティーの高い作品を制作しているアーティストが多い。またダムタイプの影響などから音楽、舞台芸術、美術など多種の表現が豊かに混ざり合い、京都のアート・シーンが形成されてきたことも見落としてはならない。そこで後半ではサウンド・アート、ノイズ、エクスペリメンタル・ミュージックのように音の境界線上に存在する音楽、または境界を融和させるようなテーマを孕んだ音楽をピックアップしていく。

GUEST PROFILE

糸魚健一(電子音楽家、shrine.jp主宰、クラブメトロ元店長)
PsysEx名義でのdaisyworld discs、涼音堂茶舖などからリリースや、積極的なライブ活動を経て、国内外で高い評価を得ている電子音楽家。関西を代表するエレクトロニック・ミュージックイベント“pod( patchware on demand、post or dry?、page of documents )”を主催。エクスペリメンタルエレクトロニカレーベル、shrine.jpを主宰。さらに約5年間クラブメトロの店長を務めるなど、常に京都のクラブカルチャーを支え、京都在住の若き実験的なアーティストの窓口となってきた。

糸魚健一

見増勇介(デザイナー)
京都在住のデザイナー。美術館をはじめとしたさまざまな文化施設の展覧会デザインや、アート・プログラムへの参加、映像・音響パフォーマンス、出版などを行う。これまでに藤本由紀夫、softpadなど関西を代表するアーティストのアートワークに関わってきた。2004年にグループ intext(尾崎祐介、外山央、見増勇介)を結成。特定の分野に捉われないマルチな活動を続けている。

見増勇介

原摩利彦(音楽家)
京都在住。静寂の中の強さをテーマに音作品に取りかかる。Tomas Phillips(LINE, NVO)との共作『Prosa』をリリース。舞台作品の音楽も担当し、舞踊家ボヴェ太郎の作品の音楽を作曲。高谷史郎演出『明るい部屋 -La Chambre Claire』(びわ湖ホール公演)に音響として参加。また柳本奈都子とユニット「rimacona」を組み、2004年より活動。
ドイツMille Plateaux『Clicks & Cuts 5.0』に参加し、初のオリジナルフルアルバムとなる『黄昏とピアノ』(Parade)を発表。ソロ最新作は『Credo』(Home Normal)。

原摩利彦

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&ART編集部:始めに藤本由紀夫さんやSoftpadなどと仕事をしてきた見増さんに、サウンド・アートについてのお話を伺います。見増さんは打ち合わせの中で、「リレーショナル・アートの台頭も助長して、ゼロ年代のサウンド・アートは全世界的に記録メディアから離れていくので、京都という地域を限定するとサウンド・アートで音源を挙げるのが難しい」とおっしゃっていました。なぜ現代のサウンド・アートは記録メディアに依存しないようになったのか、考察をお聞かせください。

見増勇介

見増勇介:“音楽”と“サウンド・アート”それぞれの立場で話してみます。まず音楽は基本的には形にならないものだから、何らかの形式に落とし込む必要があります。そこで20世紀末からは、物質を伴う最後の記録メディアであるCDに依存してきました。その後2005年にiTunes Music Storeができてから、「CDメディア、あるいはジャケットが必要かどうか」ということが議論され、現在では音楽はデータで扱われることが主流になりました。一方今回調べた限りでは、サウンド・アーティストと呼ばれる人たちで、21世紀以降記録メディアに音源を落とした人は少なくとも関西ではほとんどいません。例えばSoftpadが最後にCDを出したのは1999年です。こういったことから僕は、サウンド・アーティストがミュージシャンとは少し違う方向から音を見ているように感じています。一般的に、ミュージシャンは最終的にスピーカーから出てくる音をイメージして楽曲を制作しますが、関西のサウンド・アーティストとしてカテゴライズされている藤本由紀夫さん、八木良太さん、ニシジマアツシさんなどの作品の最終的なアウトプットは、空間あるいはそれが発生される物質自体で、音質や音圧などは完全に二次的なもの、というかほとんど頓着していません。「音をメディアに落とし込むことを、CDなどとは別の方法論で示そうとしている」ことが、ひとつの見解として伺えます。


原摩利彦:Softpadの最近のリリースは、ダムタイプの山中透さんとのコラボレーション作品ですよね。

&ART編集部:最後にリリースしたのが20世紀末というのもおもしろいですね。お話が出たので、この流れで&ART編集部が選出した、八木良太さんが現在リリースしている唯一のDVDを流します。

  • 八木良太/Vinyl - clair de lune DVD『time cosmique』より リリース:2008年
八木良太 「Vinyl」

八木良太 「Vinyl」 2005 18×2cm
Record made of ice、Record player、
Refrigerator

&ART編集部:見増さんのおっしゃるように、ミュージシャンとサウンド・アーティストの音に対するアプローチの違いは大切だと思います。本作はサウンド・アーティストの音に対するアプローチが記録としてリリースされている数少ない例ではないでしょうか。

見増勇介:八木さんは昔クラブ・メトロでcommunicate muteというイベントに参加していたそうです。今流れている映像は氷のレコードがレコードプレイヤーで再生されるという作品です。氷が溶けていくにつれて、そこにあった情報も溶け出し、音がノイズに変わっていきます。ここで重要なことは八木さんが作ったのは音楽的な要素でなく、そこに至るまでのプロセスだということです。


communicate mute イベント風景

communicate mute/クラブ・メトロでのイベント風景

communicate mute イベント風景

communicate mute/2001年 オーストリア・ デサインの現在 austrian lab(京都国立近代美術館)オープニングレセプション イベント風景

糸魚健一:発想がすごいですよね。10分足らずで急速に劣化が進んでいるわけじゃないですか。レコードも、CDですら何回も聞いているとこういうふうになっていくわけですよね。スピード感を感じるところがおもしろいと思います。

&ART編集部:八木さんはこれまでにレコード、テープなどの記録メディアを使って作品を制作してきています。&ARTのインタビューで「氷でレコードを作りましたが、冷凍するということは保存することや記録することと密接に関わっている」というお話しをされていました。記録メディアを用いているとはいえ「溶けて聴こえなくなるレコード」「カセットテープの磁気テープを立体に置き換えた球体から再生されるノイズ」など、多くの場合、記録機能が欠落した状態を作品化しているように見えます。これは写真が登場して、記録メディアとしての機能が必要でなくなった美術の在り方そのものを現していると読み取ることもできます。その在り方はサウンド・アートが記録メディアに依存しなくなったこととも関連しているのではないでしょうか。

見増勇介:藤本由紀夫さんが以前「エネルギーを出さずに音を感じられる作品は可能だと思います」と言っていましたが、そういったことも音楽とサウンド・アートの入口の違いとして重要だと感じています。音楽作品はすでにあるフォーマットからはじまることが常ですが、サウンド・アーティストの場合は、音が発生するという根源的なところから考えている人が多いと思います。

糸魚健一:電子音楽ではラップトップで楽器を制作するようなプロセスで、楽曲制作する場合もありますし、そういう意味ではサウンドアートに通じる部分もあるかもしれないですね。


DISC INFO

八木良太/『time cosmique』

発売年:2008 レーベル:無人島プロダクション フォーマット:DVD 規格品番:MUJIN-003

主に音や文字、時間を題材に作品を制作する美術作家 八木良太の初作品集的DVD。氷でできたレコードをレコードプレイヤーで再生する「Vinyl」、レコードに粘土を乗せ、レコードプレイヤーの回転で陶芸作品を作る「Portamento」など、2008年までの代表作25作品が収録されている。作品を通して音に対する多次元的な視点を感取することができる。

八木良太/『time cosmique』

見増勇介:原君は2005年くらいからソロでコンピューターを使って音楽を作り始めたという話をしていましたが、言うなればデータ世代ですよね。

原摩利彦:そうですね。当時はCDからデータに主流が変わる頃でした。

見増勇介:原君の世代の立ち位置から見た時、CDのような物質としての記録メディアに楽曲を落とし込むことに重要性を感じていますか。

原摩利彦

原摩利彦:現在でも「CDを出しているか、出してないか」ということによって評価されるところはありますし、まずそういった側面において重要だと思います。もうひとつの側面として「CDに音を入れたい」という個人的な欲求はあります。高校生の時に初めてWindowsのPCを購入し、その時初めてPCでCDを読み込めることを知りました。ただ当時まだ一般家庭でCDに録音はできなかったので、CDに録音することに対して憧れはありましたね。録音するために、TASCAMの業務用の機材を購入したりしました。


見増勇介:糸魚さんはどうですか。

糸魚健一:形になるということは重要だと感じています。僕はCDが主流になってからレコードを作りましたが、それはダウンロード販売が始まって数年経ってもCDが作りたいと思う気持ちと一緒だと感じています。

見増勇介:シェアは少なくなっていますが、アナログメディアもまだまだ強いですよね。糸魚さんはDuennlabelからリリースされた『After Tape』というカセットテープのコンピレーション・アルバムに参加していましたよね。

糸魚健一:あのコンピレーションの話が来るまで、カセットテープのことは忘れていたんです(笑)。レコードと違って再生装置自体があまり流通していないですし、ダウンロードの時代にリリースすること自体がおもしろいと思いました。

原摩利彦:曲を制作する時に、カセットテープで録音した音源をPCに取り込むという手法を使うことがあります。カセットテープは安くて期待している音質になりますし、オープンリールよりも設備が大袈裟にならないので僕はすごく好きですね。

見増勇介:劣化するうえにCDよりも脆い。そういう意味ではデータと対極にある独特なメディアだと思います。

&ART編集部:では続いて&ART編集部が推薦する、Aube中嶋昭文さんの音源を聴いていきます。

  • Aube/Recondite アルバム『CHAIN [RE]ACTION』より リリース:2005年
Aube ライブ風景

Aube ライブ風景

&ART編集部:2004年頃に御幸町三条のカフェ・アンデパンダンで頻繁にノイズ系のイベントが開かれており、WHITEHOUSEやVoice CrackのNorbert Moslangなどがゲストで招かれていました。アンデパンダンで開かれていた、BusRatch主催イベントcusineで初めてAUBEを観て、そのストイックさに衝撃を受けました。
今かけている音源は金属チェーンの音以外のソースを用いずに、それをループさせたり、残響・反響音系のシンプルなエフェクトをかけて制作されています。アルバムには金属の共振音をループさせるようなアイデアなど、チェーンを用いたサウンドのバリエーションが5つ収録されています。中嶋さんがこの音源をノイズと定義しているかわからないので、ノイズと呼んでいいのかは分かりません。しかし一般的にノイズを手掛けるアーティストの多くは、物質をマテリアルとして主軸に据え展開するパフォーマンスを行いますし、マテリアル自体をライブ会場に持ち込むことも少なくない。
楽器ではなくチェーンソー、ドライバー、割れたレコード、石、鉄板などを用いる場合もあり、エレクトロニカのアーティストに比べて圧倒的にフィジカルだと思います。ラップトップで演奏する場合でも、聴きにくるお客さんは音の振動が直接体に触れる感触を重視している人が多い。つまりノイズは双方向にフィジカルさが求められる分野/概念だと言えます。


見増勇介:中嶋さんのライブを1度だけ観たことがあるのですが、その時の印象は忘れられないですね。「京都にこんな人がいるのか」と思いました。

&ART編集部:糸魚さんは中嶋さんと親交が深いですが、中嶋さんがご自身の音楽について語っているのを聞いたことはありますか。

糸魚健一:中嶋さんは毎回ライブセットを変えるのですが、持ち込む楽器がいつもおもしろいので、その構造を聞いたりしていました。とても穏やかな人です。

&ART編集部:ソロだけでなく、イタリア出身のノイズ・アーティストであるMaurizio Bianchiなど、世界的に有名なアーティストとの共作をリリースしていますよね。これまでに海外の様々なレーベルからリリースがあったりと、独自のネットワークを持っている印象があります。

見増勇介:謎が多いですよね。そういった神話性のフィルターを通して作品を聴くと、よりイメージが膨らみます。

糸魚健一

糸魚健一:ライブパフォーマンスの中でも物語を作りやすいノイズというジャンルの中で、様々なアーティストが個性を出そうと工夫していますが、中嶋さんは押すばかりではなく、引くような立ち位置で演奏しています。ただアヴァンギャルドなだけではないんです。

原摩利彦:引くというのは京都のアーティストがもつ特長のひとつではないでしょうか。作品の強度を保ちながら、あえて押さずに待っている人が多いと感じます。

見増勇介:原君も引きのタイプだよね。

原摩利彦:そうですね。「どうしてもっと前に出ないのか」と聞かれることもありますが、そういうスタンスなんだと思います。


見増勇介:原君は引き方がうまくて、京都の他のミュージシャンに見られるような引き方とは違うんですよね。今までありそうでなかった音の作り方をしていると思います。

DISC INFO

Aube/『CHAIN [RE]ACTION』

発売年:2005 レーベル:Blossoming Noise(USA) フォーマット:CD 規格品番:BN001CD

京都のノイズアーティスト中嶋昭文のソロ・ユニットAubeが、2005年にリリースしたアルバム。金属チェーンの音のみをソースとし、チェーンに対する行為のバリエーションとシンプルなエフェクトで作品を成立させるというミニマルな姿勢で、マキシマムな効果を生み出している。

Aube/『CHAIN [RE]ACTION』

&ART編集部:では続いてPeter Golightly さん、Jun Nishimuraさん、Bun ITOさんを中心とするパフォーミング・アーツ・ユニットredsleepに関連したタイトルを挙げていきます。まずは見増さんに選んでいただいたJun Nishimuraさんの音源です。

  • Jun Nishimura/A-underground 
    アルバム『ulmコンピレーションCDR』より リリース:2002年
INTERMODULATION 13th

"INTERMODULATION 13th"
December. 2002 at club EAST
live:PsysEx(shine), DJ colombia(ULM),
jade garden(ULM), Invisible Structure.(MONO TYPE),Bun Ito
image efx:Takayuki Miyashita,
Yusuke Mimasu, Kiyokazu Nagai

見増勇介:2002年頃にINTERMODULATIONというイベントを伊藤文(Bun ITO)君と一緒にやっていました。その打ち合わせをカフェ・etwでしていた時に、たまたま店内のBGMでこの曲が流れたんです。
etwのスタッフからJun Nishimuraさんの曲だと聞いたことがきっかけで、僕も文君もJunさんのことを知りました。で、ライブを見たくて、当時Junさんがレギュラーで出演しており、メトロで行われていたulmというイベントへ行きました。イベントに行くと特典でコンピレーションCDRがもらえたのですが、そこに収録されていたのがこの曲です。iTunes Music Storeではこの曲が収録されている『A-underground』というアルバムが2008年リリースとなっています。けど実は2002年頃に曲は出来ていたんです。iTunes Music Storeからダウンロードできるバージョンは9分程度なのですが、CDRに収録されていたものは13分程度あり、こちらの方が僕は好きです。
深海のようなイメージとダークな雰囲気をもっていて、無駄な音がなく、高音と低音のコントラストが気持ちいい。作り込まれた隙のない曲だと思います。

糸魚健一:文君とJunさんが知り合ったのは、そういった経緯だったんですね。

&ART編集部:ではこの流れで糸魚さん推薦のBun ITOさんの音源を流します。このアルバムのデザインは見増さんが手掛けています。


  • Bun ITO/chapter02 アルバム『Road to Nowhere - Warr Guitar Solo Improvisation』より
    リリース:2005年

糸魚健一:このアルバムはCommune Discから出ている音源です。デザインが見増さんだということは今思い出しました(笑)。編集をほとんどしてないと思うのですが、音の作り方が非常に繊細で、文君の気合いを感じます。

見増勇介:これは一発録りなんですよ。

対談風景

&ART編集部:こういったスタイルで演奏し始めたころは、Steve ReichもManuel Gottschingも知らなかったそうです。

見増勇介:彼が今やっている音楽はオーガニックな印象を受けますが、当時はそれだけではありませんでした。彼が手がけた過去の作品で、展示空間にスピーカーを10台程度置いて、そこから音を出力するというサウンド・インスタレーションがありました。その音は「“B/A/D=BAD”というふうに、言語として意味を持つようにコードを組み合わせることで、音を言語化させる」というコンセプトを持っていました。文君がとても独創的な視点から音を捉えていることが伺えます。


糸魚健一:電子音楽系のイベントにも出演するし、BASED ON KYOTOのサポートもしているし、色々な面をもっていますよね。

見増勇介:では&ART編集部チョイスによる、redsleepのDVD『The Sun Song』を再生します。

  • redsleep/The Sun Song DVD『The Sun Song』より リリース:2007年
redsleep DVD『The Sun Song』スチール

redsleep DVD『The Sun Song』スチール

&ART編集部:こういった作品の記録がパッケージされていること自体貴重だと思います。音楽面では、途中変拍子が入ったりと、80年代イギリスのアフリカン・ビート的ですごくセンスがいいですね。荘厳なイメージのトラックにのせてPeter Golightlyが歌うパートは、一番充実していた頃のPeter Gabrielを彷彿(ほうふつ)とさせるようなロマンティシズムがあります。こういう感情表現豊かな楽曲と、肉体表現で成り立っているパフォーマンスは今少ないですよね。特にエレクトロニカの若いアーティストの多くは、肉体的なパフォーマンスを恥ずかしがる傾向にあると思います。


糸魚健一:ピーター(Peter Golightly)はダムタイプのメンバーで『S/N』などにも出演しています。京龍館というダンススタジオを主宰していて、僕もshrine.jp企画で実験音楽のアーティストを集めてイベントをやっていました。ピーターに出演してもらうことも多く、僕とピーターのコラボレーションもよくありました。

見増勇介:そういう在り方は京都らしいですよね。

DISC INFO

Jun Nishimura/『A-underground (RMT) - EP』

発売日:2008/5/29 フォーマット:Data

京都出身の音楽家(コンポーザー、キーボーディスト、ギタリスト)Jun Nishimuraの1stアルバム。徹底して作り込まれたサウンドが、光の届かない深淵(しんえん)を漂っているかのような、奥行きのあるイメージを生み出している。対談内で紹介された音源“A-underground”が収録されていた『ulmコンピレーションCDR』は現在入手困難だが、バージョン違いを本アルバムで聴くことができる。

Jun Nishimura/『A-underground (RMT) - EP』

Bun ITO/
『Road to Nowhere - Warr Guitar Solo Improvisation』

発売年:2005 レーベル:Commune Disc フォーマット:CD 規格品番:com53

12本の弦を両手でタッピングして演奏するWarr Guitarを用い、独自のサウンドスケープを描き出すアーティストBun ITOの1stアルバム。クリアな音色で奏でられるシンプルなフレーズをループ/増幅することで、無限に広がるかのような空間性を作りあげている。レーベル/ジャケットデザインはintextの見増勇介が手掛けている。

Bun ITO/『Road to Nowhere - Warr Guitar Solo Improvisation

redsleep/『The Sun Song』

発売日:2007/2/2 レーベル:redsleep フォーマット:DVD

Jun Nishimura、Bun ITO、そしてダムタイプのメンバーとして活動し、世界的なダンサーとして評価されるPeter Golightlyを中心とするパフォーマンス・ユニット“redsleep”。本DVDには2006年9月3日に京龍館で行われたパフォーマンスが収録されている。これまでredsleepは様々な形態で表現を行ってきたが、本作はダンス、音楽、映像などの表現を複合したトータルな舞台芸術作品となっている。ゲストパフォーマーとしてSumie Sagami、Joho Nasunoの2人が参加。

redsleep/『The Sun Song』

&ART編集部:では最後に竹村延和さん音盤を聴きましょう。まずは『ソングブック』です。こちらは&ART編集部と糸魚さんからの推薦です。

  • 竹村延和/魔法のひろば アルバム『ソングブック』より リリース:2001年

&ART編集部:竹村さんは90年代前半はクラブ寄りのビートをもった楽曲を中心に制作していましたが、90年代後半以降は、より表現力を重視するスタイルに移行していったように感じます。今流れている曲のボーカルはアキツユコさんなのですが、特筆すべきなのは竹村さんが「普段会話している声と変わらない発声」にこだわっている点です。肉声の持つ本来の魅力に寄り添った稀有な“うたもの”だと思います。かわいいだけでなく、無垢なゆえの狂気や不安定さが詰まった、90年代後半以降築いてきた竹村さんの世界観の集大成的アルバムに位置付けられるのではないでしょうか。この音源の一年後にリリースされた『テンス』は全編スピーチ・シンセサイザーによる人工の音声が採用されたボーカルアルバムです。『テンス』は&ART編集部からの推薦です。

  • 竹村延和/亡くしたもの アルバム『テンス』より リリース:2002年
対談風景

&ART編集部 :現在初音ミクなどの、音声合成デスクトップミュージックソフトウェアが進歩し、本アルバムがリリースされた2002年当時に比べ、人間の声に非常に近くなっています。例えば“愛”という言葉を音声合成で再現する時に、“あ”から“い”への変化のバリエーションを作ることで人間に近い発声を再現できることになったということが、音声合成の進歩の要因として大きいそうです。ただそうやって理論も印象も人間に近づいた音声で制作された歌よりも、『テンス』でのスピーチ・シンセサイザーのボーカルがもつ不完全さの方が、僕は人間らしく感じる。「人間らしさ」とは何かということ、さらに「人間らしさ」と「人間そのもの」であることの違いなど、様々なコンセプトを内包しているアルバムだと思います。竹村さんが肉声で極力過剰に歌いあげないことを意識して作った『ソングブック』の後に、こういったアルバムを出して活動休止したという流れはすごく興味深いですね。


見増勇介 :初音ミクなどのVOCALOIDの方が情報量があるのに、こちらの方が生っぽく感じるのはどうしてなんでしょうね。

糸魚健一:竹村さんご自身の作品だけでなく、主宰しているチャイルディスクからリリースされた音源も本当にいいものばかりでしたね。初期衝動を大切にしているアーティストが多かったように思います。imagined recordsからリリースしているYabemilk君なんかもチャイルディスクからリリースしています。

原摩利彦 :チャイルディスクからリリースされたアキツユコさんの『音楽室』はよく聴いていました。

糸魚健一:バンドセットや生楽器での演奏など色々なライブ編成がありますが、僕が一番好きな竹村さんのライブパフォーマンスは、ラップトップを用いての演奏です。お客さんも竹村さんも微動だにせず、音に集中している。最高にかっこいいですね。

&ART編集部:話題も尽きませんが、そろそろ時間がきたので今回はこのあたりで締めたいと思います。合計5時間に亘る対談お疲れ様でした(笑)。本日はありがとうございました。

対談風景

DISC INFO

竹村延和/『ソングブック』

発売日:2001/12/21 レーベル:CHILDISC/徳間ジャパンコミュニケーションズ
フォーマット:CD 規格品番:TKCA72283

日本が世界に誇る音楽家、竹村延和。本作はボーカルにアキツユコと西山豊乃を迎えて制作された“うたもの”アルバム。アルバム全体を通して「普段会話している声と変わらない発声」にこだわることで、肉声の持つ本来の魅力を引きだすことに成功している。童謡のようなたたずまいを感じさせながらも、かわいらしさだけでなく、無垢なゆえの狂気や不安定さが詰まっている。

竹村延和/『ソングブック』

竹村延和/『テンス』

発売日:2002/7/24 レーベル:CHILDISC/徳間ジャパンコミュニケーションズ
フォーマット:CD 規格品番:TKCA72391

『ソングブック』の1年後にリリースされた、竹村延和の10thアルバム。全編スピーチ・シンセサイザーによる人工の音声が採用されたボーカルアルバムとなっている。現在普及している音声合成デスクトップミュージックソフトウェアのようなクオリティーはないが、それ以上の「人間らしさ」を感じとることができる。本作リリース後、活動を休止している。

竹村延和/『テンス』

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