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特集 アートシーンの現在 vol.2

インタビュー After School 放課後の展覧会 木内貴志×木藤純子×花岡伸宏

それだったら自分でやったらいいんじゃないか

&ART(以下、&) : まずは展覧会を元立誠小学校跡地(以下、立誠)で開催することになった経緯を教えていただけますでしょうか。
木内貴志 『放課後の展覧会』展示風景 Photo by 市川靖史

木内貴志 『放課後の展覧会』展示風景 Photo by 市川靖史

木内貴志(以下、木内) : 立誠が閉校になったことは知っていたのですが、偶然知り合いから立誠で開催されていたイベントのことを教えてもらうまで、展示会場などとして開放していたことを知らなかったんです。僕は10年前に京都芸術センターで、小学生用の机を使った作品を制作したことがあって、その作品の新作を作りたいと思っていたのですが、発表の場所として教室のような場所がないと、制作できないですし前々から「立誠でやれたら」とは思っていたんです。

& : ではきっかけとしては自身の作品を展示するため企画したという感じだったのでしょうか。
木内 : 当時は展覧会を自分が立ち上げるというのは考えておらず、作家として誘われるのを待っていたんです。しかし、立誠は大学などの団体が展示をしていることなどが多く、入れそうな余地がありませんでした。ただ、開催されていた大学の選抜展を見ると、単に発表の場としてそこしかないからやっているような学生もいて「なぜここで展覧会をしているのか」という意図が希薄なものが多かったように思えたんです。もちろん見に行って面白いものもあったんですけど「小学校の使用可能なすべての場所を使用した大きな展覧会を見たい」と思い、それだったら自分でやったらいいんじゃないかと考えたことがきっかけです。
& : 実際に展覧会としてはどのような内容を目指したのでしょうか。
木内貴志さん
木内 : 立誠はすごくいい雰囲気を持っており、場所自体がテーマのようなものなので、あえてそれ以外のテーマは設定しないようにしました。学校という設定で色々なものをたっぷり見ることができるようなものを僕個人としては目指していました。作家主導の展示は、主催者の大学時代の同級生を集めて開催するような場合が多く、世代やジャンルが偏ってしまうことも多々あると思うんです。でも幅があった方が、展示する側も見る側もおもしろいと思いますし、今回はなるべく色々なパターンの作品を見ることができるように、あえて個人の繋がりを持たないアーティストに声をかけることなどで、幅も持たせることを意識しました。また、今回の展覧会の具体的な理想としては、1995年に行われた「第五回 芸術祭典・京」という京都市が主催のイベントの際に、旧・龍池小学校跡地(現在の国際漫画ミュージアム)で行われた造形部門展覧会『小鳥は大空を想像する』がありました。


小学校という場所で展覧会をすること自体がおもしろい

& : 花岡さんははじめに声をかけられたときはどういう印象でしたか。
花岡伸宏さん
花岡伸宏(以下、花岡) : 僕は木内さんのことをそこまで知らなかったんです。展覧会でちょっと会って紹介してもらってしゃべった程度でした。声をかけていただいたときはちょうど、自分の活動として何の予定もなかったんです。公募展にも出していたのですが、落選して絶望的な状態でした(笑)。作家人生これからどうなるのかなという…(笑)。そんな時に声をかけてもらえたので単純にすごくうれしかったですね。

& : 木藤さんはいかがでしたか。
木藤純子 『放課後の展覧会』展示風景 Photo by 市川靖史

木藤純子 『放課後の展覧会』展示風景 Photo by 市川靖史

木藤純子(以下、木藤) : 私は「その場所でしか成立しない作品」を場所のもつ力を借りながらつくれたらと思っていますので、小学校という場所で展覧会をすること自体に惹かれるものを感じました。私は先ほど木内さんが挙げられた展覧会や、1999年に行われた『スキン・ダイブ』など、京都で行われた展覧会を実際に見ています。大学に通うために富山から関西に来て、小学校が会場の展覧会を初めて見ました。それが今までに見たことのないような美術の展覧会だったので、当時学生だった私はすごく驚きましたし、今でも印象に残っています。通常では、ギャラリーやアートスペース以外の、美術のために用意されていない場所では、なかなか発表や展示する機会もありませんし、今回のお話はとても興味深いと思いました。 木内 : 現在は京都の中で小学校を使った大きい展示というのはなくなってきていたので、勝手に引き継いだというか(笑)。まさか自分がやるとは思っていなかったですが。

木藤 : それを大学機関とかそういう母体のない、一人の作家がやろうとしているのはすごいことですし、そういう話に声をかけてもらうことは光栄だと思いました。
& : 作品の構想どのように考えていきましたか。
花岡伸宏 『放課後の展覧会』展示風景 Photo by 市川靖史

花岡伸宏 『放課後の展覧会』展示風景 Photo by 市川靖史

花岡 : 僕はそれまで「作品単体で成り立つもの」を制作してきていましたし、場所をあまり意識したことがなかったんですね。だから木内さんから小学校で展覧会をやるという話を最初にお聞きした時は試練を与えていただいたような感じで(笑)、いいチャンスだと思いました。それから「自分が小学校の時に何をしていたか」ということを考えて、図工の時間を連想したんです。僕の展示した場所は工作室でしたし、普段の制作の際に扱うモチーフや素材もチープなものを使ったりしているので、工作的な方法で作れたらいいかなというイメージはありました。

& : 展示していた作品の多くは実際現場で制作したものらしいですね。
花岡 : そうですね。机が並んでいる状態でしたし、「図工の授業が終わった後のようなイメージ」になったらいいなと思っていたので、作品も「色々な人が作りました」みたいな雰囲気を出したかったんです。
& : 木藤さんはインスタレーションですし、アイデアを持ち込んだというよりは、展示会場を見ながら考えていったような感じですか。
木藤 : 両方ですね。普段生活している中で気になったこととか、以前旅行に行った時に感じたこととか、そういうものを色々とつなぎ合わせていくような感じです。ただやっぱり今回の展覧会においては場所がすごく強くてそこからインスピレーションを受けました。

展覧会を一生懸命作る人がいかに重要か

& : 運営はほとんど作家で行ったような感じでしょうか。
木内 : 基本的には作家で、あとは大阪にあるGALLERY wks. の片山和彦さんにデザインなどを担当していただきました。
& : 展覧会が始まるまで、月に一度集まっていたと伺ったのですが、そこではどのような話をしていたのでしょうか。
木内 : 最初は会期をいつ頃にするか、監視のボランティアさんをどうするか、という話などからはじまりました。そのミーティングで、木藤さんが「放課後の時間に展覧会やるというのはどうですか」という意見をだしてくれてたんです。木藤さん自身が会社に勤めていますし、見たい展覧会を仕事を終えてから見ることができないことが多いということもあって、平日の開館時間は15:00~20:00ということになったんです。こういう意見は「僕が企画するから作家は作品だけ作っておいたらいいよ」というやり方では出なかったと思います。立誠は美術館よりも気軽に入りやすい場所ですし、色々な人が、気軽に入れるような展覧会にするべきだと、自然に考えるようになっていきました。
& : 会期中イベントがいくつもありましたが、その一つである、作家みんなで楽器を持ち寄って校歌を演奏する「放課後の校歌演奏会」は木藤さん発案なんですよね。
木藤純子さん
木藤 : それに関しては一つエピソードがあって、私の父と私は同じ小学校の出身なんですね。何かの機会で校歌を歌いだしたとき、二人とも歌えたんです(笑)。それがすごく楽しかったんですね。小学校ってその人それぞれに、大切なものがあったり、思い出が詰まっていると思うんですよ。そういった場所で展覧会をするということで、「そこでやる意義を作りたい」ということは考えていました。

& : 協力・協賛のお願いは木内さん自身で回ったんですよね。
木内 : 最終的には僕一人じゃなくて、参加作家さんの知り合いを紹介していただいたりしました。協賛と言っても例えば一口何万円という形ではなく、「そのギャラリーがいつも送っているDMにお知らせを同封していただく」という形などをとりました。そのおかげで幅広いところにチラシを届けることができました。他には印刷業者さんに協賛いただいたので、会場で配る案内も無料で配布できました。会場に設置した印刷業者さんのチラシもだいぶはけましたし、相互に利益が生まれるようにというのは配慮しながらやりましたね。
& : 展覧会から時間もたっていますし、たくさんの方のリアクションも返ってきたと思います。そういったことも含め、最後に今回の展覧会を改めて振り返っていかがだったでしょうか。
花岡伸宏さん 木内貴志さん 木藤純子さん
木藤 : 私の作品は基本的に残らないので、あんなにたくさんの人に見ていただいたというのは、まず嬉しいです。あとは作品ってそれだけでは成立しなくて、やはりその空間と人が関わることで成り立つものだということを改めて思い知りました。花岡 : はじめは「ああいう大きな空間で作品がちゃんと成り立つのか」ということはすごく心配だったんですけど、結局は自分がやりたいことを素直にやっていけばそれは伝わるんじゃないかと感じました。空間を生かした展示の経験は、また別の展示にも生かしたいなと思いますね。

木内 : まず「単純にいい展覧会ができたということ」、「自己満足で終わらずちゃんと伝わっていたということ」は本当によかったです。ただ、今回企画して、企画/運営する人や、ボランティアを仕切る人だったり、作家じゃないポジションで展覧会を一生懸命作る人がいかに重要かということがわかりました。すごくしんどかったので(笑)。きてくれたボランティアの人たちにはすごく楽しんでくれましたし、自分自身も一つの展覧会やり遂げたという満足はありました。なので、こういう思いをもっと多くの人に知ってもらうことができ、今後そういう人がもっと増えれば、作家はできるだけ作品に集中できて、もっといい展覧会ができるんじゃないかと思います。あとは昔僕が小学校で行われていた展示を見て、そういうものを目指したように、見にきた人や関わった人が「放課後の展覧会」のようなものをできたら、と思い、いい展覧会を企画してくれたら何よりですね。そこに作家として呼んでいただけたらさらにうれしいですね(笑)。
『放課後の展覧会』カタログについて

『放課後の展覧会』カタログについて
5月下旬に「放課後の展覧会」の記録集が発行されます。出品作家全11名の展示作品やイベントの内容などが記載された公式カタログです。入手方法や詳細については、「放課後の展覧会」公式ページの「学級日誌」(ブログ)を御覧下さい。
[公式ウェブサイト] http://houkagoten.org/
[学級日誌(ブログ)] http://www3.atword.jp/houkago2009/



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