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PsysEx

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INTERVIEW WITH PSYSEX 2009.09.17

作品について - 世の中にないような音を利用して組み合わせていきたい

&ART(以下、&) : 楽曲はどのようなプロセスで制作されていますか。
メトロでのイベント風景

メトロでのイベント風景

糸魚健一(以下、I) : 既存の色々なシンセサイザーのパーツを組み合わせて、自由に自分でデザインすることができる、「ソフトウェアシンセサイザー(※1)を設計するためのソフトウェア」を使って作っています。ソフトウェアシンセサイザーというと、すでにパッケージングされた、過去の名機をシミュレートしたものが多いんですけど、そういうものには僕はあまり興味がなくて、シンセサイザーの中でも、「鍵盤があって押したときに音が鳴る」というもの以外にも、ステップシーケンス(※2)という、テンポ、フレーズを使ったシンセサイザーの考え方があるのですが、それもソフトウェアシンセサイザーで組み立てることができます。既存のDAW(※3)を使わずに自作のステップシーケンサーを軸にして作曲する事が多いですね。作曲のプロセスとしては、そのソフトウェアを操作している時にアイデアが出てくるのですが、それは「曲を作るため」というよりは、シンセサイザーを自分でデザインする作業の中で、アイデアがひとつの形になった時に、組み上がったシンセサイザーを1回動かしたら1曲できて、2回目動かしたときに2曲目ができるといった感じですね。
& : では「こういう楽曲が作りたい」というイメージがあって制作にとりかかるわけではなくて、楽器を作る過程で曲ができていくような感覚ですか。
I : そうですね、本音を言うと、半田ごてを使って基盤から実際にシンセサイザーを作れたら最高に嬉しいんですけど…。その場合例えば失敗したときに、もう一回やり直すということができませんから。10年近く前に現在使用しているソフトウェアに出合ったときに「これはすごい」と思いました(笑) 現在使用しているものは、ドイツの製品なんですけど、当時はバージョンもすごく低かったですね。
& : ソフトウェアはずっと同じものを使用しているのですか。
I : そうですね。今使用しているものが好きなので。ただLogic Pro、Digital Performer、ProToolsなどのDAWソフトにも興味がないことはないので、未だに色々試しているのですが、「自分の音」とは違うなと思います。

& : 糸魚さんの音楽のコンセプトはなんでしょうか。
I : 先ずは、大きなコンセプトとしてポリリズムがあります。ポリリズムはもともとアフリカの民族音楽で、色々なリズムが重なり合う音楽なのですが、それをデジタルの世界で再現したいと思っています。音質に関して言うと、なるべく「世の中にないような音を利用して組み合わせていきたい」と考えているので、新しい発音方法だったり、シンセシス(※4)の考え方があれば、それが別にデジタルじゃなくてもいいと思うんですよ。色々なソフトウェアシンセサイザーを作って、「人に出来ないこと」をやりたいというのはありますね。
& : PsysExの音楽は、アルバム1枚、ライブパフォーマンス1セットを通してすごくリスナーのことを考えて構成しているように感じますね。
I : PsysExの音楽は実験音楽にもカテゴライズされる可能性はあるんですけど、絶対にポピュラーミュージックは意識したいと考えています。個性を出したり、シンセサイザーで実験的なことをしていても、例えばボトムの部分とか、メロディーとか、そういうパートごとの成り立ちでポピュラーミュージックがとっている形は、すごく理にかなっていると思っているのではずしたくないと考えています。
糸魚 さん

京都について - 一歩はなれたところで、トレンドを追える、ちょうどいい距離感

& : 糸魚さんは京都の老舗クラブメトロの店長を努めていますが、メトロで勤めはじめてどのくらいですか。
メトロでのイベント風景

メトロでのイベント風景

I : 勤め始めてからは14年くらいで、店長になってからは3年くらいです。メトロは来年20周年なのですが、店長がまだ僕で3代目なんです。はじめは軽い気持ちで面接を受けたのですが、入ってみてから色々な衝撃を受けてはまり込んでいきました。
& : メトロは「誰でもパーティーを楽しめるクラブ」としての要素と「前衛的なものを紹介する場としてのクラブ」としての要素が、すごくいいバランスで共存していますよね。例えば東京の市場の大きさと、流通のスピードの中で前衛的なイベントを行うのと、京都で行うのとでは、また違った難しさがあるのではないでしょうか。
I : 京都には一歩はなれたところで、トレンドを追える、ちょうどいい距離感があります。例えば前衛的な活動をしている人たちの中でも、勢いのある人たちというのは、遠くにいるからこそよく見えることがあります。東京の流通のスピードの中に入ってしまうと、わからないようなこともわかると思いますね。

& : 前衛的なイベントを京都でやりくり回していくということ大変なことですよね。
I : メトロも僕が入った当時はそんなに前衛的なアーティストを取り上げるイベントは少なかったんですけど、そういったことをさせてもらえるのは、それを面白いと感じて、理解してくれるオーナー、ブッキングプロデューサがいるからというところが大きいです。前衛的なものばかりのお店でも面白くないと思いますので、パーティーの要素が強いイベントとのバランスはとても大切。ただしメトロにとって前衛的なことをやることも大事なことだと考えています。
& : 糸魚さんが感じる京都の街の魅力はなんでしょうか。
I : ライブやDJで呼んでいただいて、他の都市にいくことがあるんですけど、帰ってきたときに京都はデザインという意味ですごいなと思いますね。それは、近代建築というよりは、昔からある日本的な部分が占める割合が多いのだと思います。生活していても住みやすいですし、何より空気感が違いますよね。特に僕はそういうことを研究していたり、音楽へフィードバックしようと意識しているわけではないですが、涼音堂茶舗での活動や、2003年から続けている法然院での夏のイベントにはそうした、生活からのフィードバックが少なからずあると思います。

社会について - 多い日は何百人もの人と顔を合わせてのコミュニケーションがある

& : 糸魚さんにとって「社会」とはどのようなものでしょうか。
I : 自分では突き詰めて活動しているつもりなので、そういう意味で社会から違う方向に向かってしまった時期もあるんです。究極的に物事を突き詰めると、社会から閉ざされたところに行ってしまうと思うのですが、でも音楽活動は人の耳に触れるもので…そこにジレンマがあったりしますね。
& : 糸魚さんはPsysExとしての活動、自身のレーベルshrine.jpの運営、そしてメトロの店長という様々な顔を持っており、社会において様々な角度からの人とのコミュニケーションを経験していますね。
I : メトロで働いていると、多い日は何百人もの人と顔を合わせてのコミュニケーションがあるんですよ。生身のコミュニケーションはダイレクトな発見がありますし、話している中でその人の経験を得ることが出来るので自分の勉強にもなります。一方でMySpaceにもはまっていて、そこでやりとりする顔も知らない友達というのも増えているんです。全然知らない世界中の人とコミュニケーションができて、自分の作った音が聞かせられるということは、すごいことだと思います。最近はライブの終わりに直接感想をくれる人もいれば、ライブが終わって帰ったらSNSでフレンドのリクエストが来るということもあるので、不思議な感覚があります。

& : 今までに様々なレーベルから音源をリリースしてきましたが、そういった意味でメディアを通しての社会とコミュニケーションも経験されていますね。
I : 例えば、daisyworld discs(※5)からリリースした時は、20年くらい音信不通になっていた幼馴染から突然メールが来ました。高校生のときに、僕が作った音源を聞かせていたような相手だったので、その時代と照らし合わせて聴いてくれたりしていて…。そのようにメジャーの流通力によって、「応援している人も実はこんなに遠くにいたんだ」ということを思い知らされたりすることもありますね。
糸魚 さん

今後の活動について - 違うレーベルの方とも出会えるのは魅力的ですね

& : 今後どのように自分の作品を展開していきたいですか。
I : シリーズでアルバムの制作をしているのですが、それは続けたいと思います。シリーズでは1つのコンセプトで違うレーベルをまたいでリリースしています。レーベルにはそれぞれ特有のコミュニティーが別々にある状況なので、そうやってまた違うレーベルの方とも出会えるのは魅力的ですね。 あと、PsysEx以外にも今、人と共同でやっている別のユニットでの活動もあり、それも継続していきたいと考えています。

1つはattic planというラップトップの即興演奏のデュオなんですけど、結構長く活動していて、録音もしたいなと思っています。あとは自分の音を人に叩かせてピッチを作るという、ドラマーをフィーチャーしてリズムに特化した、basement planというユニットがあります。また、自身のソロではダンスミュージックに特化したDJ iToyというユニットもやっていて、それはbeatportというダウンロード専門のストアを中心に活動しています。

(※1)シンセサイザーの機能をコンピュータ上で擬似的に実現するソフトウェア。
(※2)シーケンスとは、デスクトップミュージックで、演奏データを再生することで自動演奏を行うソフトウェアのこと。
ステップシーケンスは、鍵盤でなくボタンなどで打ち込んでいくシーケンス。
(※3)Digital Audio Workstation(デジタルオーディオワークステーション)の略。
デジタルでオーディオの録音、編集、ミキシングなどの音楽制作に必要とされるあらゆる作業ができるシステム。
(※4)必要とする特性、性質をもつ対象を作り出すプロセス。
(※5)細野晴臣主宰の音楽レーベル



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