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Otograph

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INTERVIEW WITH OTOGRAPH 2010.03.10

作品について - 人の心に入りながらも、冷めた視点で作品を作る

&ART(以下、&) : Otograph(オトグラフ)の活動内容についてお聞かせください。
Variations 2007

Variations 2007

井浦崇(以下、I) : 2004年からOtographとして共同制作を始め、音楽活動と同時に、インスタレーション作品を発表してきました。音楽では、これまでに2枚のCDをリリースしてきたのですが、それ以外にもPlayStation3や、PSPのゲームのサウンドトラックも制作していて、そのサウンドトラックがPlayStation Network(※1)から、ワールドリリースされた初めてのオーディオアルバムの一つになりました。
& : 映像と音楽どちらも作っていますが、先にどちらを制作し始めたのでしょうか。
I : Otographとしては音楽から始めたんですけど、最初のライブや、作品発表の段階ではすでに映像も作っていました。
大島幸代(以下、O) : "映像から音"、"音から映像"をイメージさせるような作品にもともと興味を持っていたんです。私は映像と音、どちらかを頭に描こうとする時、その両方が同時に頭に浮かんでくるのですが、そのことについて井浦に話した時に、同じようなことを考えていたみたいで「そういった作品を作っていこう」ということになったんです。
& : 制作するときの井浦さん、大島さんそれぞれの役割をお聞かせください。
O : 作品制作はお互いが別々に持っているイメージの擦り合わせから始めることが多いです。何かの出来事があって、それに対して思っていることが別々にあり、それを擦り合わせながら作品にするという感じなので、どちらかが映像でどちらが音でという感じではないですね。ただ、どちらかと言うと井浦の方が"技術より"です。
I : プログラミングは僕が手を動かすことが多いです。大島の方が作品全体をコントロールすることは多いですね。
O : そうですね、コンセプトや「こういうものを制作する」という全体像を私が考えることは多いです。
& : 2010年の東山のギャラリーART SPACE NIJIでの『White Noise White Wave(以下、WNWW)』は、音と視覚による環境の影響をシステムで取り込んだインタラクティブな作品でした。この作品は"海"というコンセプトがまずあって制作されたそうですね。
white noise white wave 2010

White Noise White Wave 2010

O : そうですね、ART SPACE NIJIに偶然よった時に"海"のイメージが突然出てきたんです。それで「どうして海じゃないのに海のイメージが出てくるのか」ということを考えたところからあの作品は始まったんです。観察しているうちに、ギャラリーの前を行き来する車から出るノイズに独特のリズムがあることなどに気付きました。展覧会の来場者に建築関係の方がいて、「実際、ここは道路が特殊な舗装になっていて音が変わっているんだよ」ということなどを教えて下さり、新しく気付かされることもあってすごく面白かったですね。
& : 『WNWW』のようなインスタレーション展示と、ライブ・パフォーマンスという2形態を柱にして、活動しているようなイメージがありますが。
I : おおまかには、音楽的な要素が大きいのがライブ・パフォーマンス、空間的な要素が大きいのがインスタレーション展示と分けることができると思います。ただ、基本的には作品の本質は同じで、どちらの形態にしても、"現実世界の断片"のようなものを素材にして、それをプログラミングしたり、シーケンス(※2)を組み上げたりすることで制作しています。それは自分たちの視覚や、感じたこと、あるいは思考を統合するような作業になっていると思っています。そうして組み上げたものを作品としてもう一度現実の空間に還元する。その提示の仕方がライブ・パフォーマンスであれば音楽的な要素が大きく、インスタレーション展示であれば空間的な要素が大きくなる、という違いはあると思います。
O : 音楽を作る時はわりと楽しんで作っていますが、インスタレーションの時は楽しむだけでなく、自分達も「作品を制作することで何かについて理解を深めたい」という気持ちでやっています。展示空間で、自分たち自身も予測ができない何かが起こるのを待っているような感じなんですが、特定の場所から発想して作ったりとか、作品にインタラクティヴ性を持たせたりすることが多いのも、そういう理由からです。

& : 効果的なアイデアを厳選し、発表回数を絞って1つひとつの作品を丁寧に制作しているような印象を受けますね。
I : 他の方から声を掛けていただいた時は積極的に参加しますが、自分で色々なことをやろうとすると、どうしても発表する回数を増やすのは難しいです。中途半端なクオリティーでは出せないし、そのあたりのバランスは難しいのですが。
O : でも制作していないわけではなくて、たくさん作ってはいるんですよ。
I : どちらかというと多く作る方だと思います。その中から最終的に外に出すものを厳選していて数が少なくなってしまう。生産効率よりも最終的には品質を重視したいと思っています。
O : 作品を出すことで、「何か思っていたのと違う効果が出る」などの広がりがないのであれば、自分たちが面白くないんですよ。
I : 新鮮な作品の提示でなければ、あまり意味がないのかなと思います。
& : ギャラリーでの展示や、クラブでのライブ、そして2009年にはPlayStation3、PSP用ゲーム『PixelJunk Monsters(以下、PJM)』のサウンドトラックを担当するなど、様々なフィールドで活動されていますね。自らイメージを持ったアーティストであり、時に外部にパートナーを伴ったクリエイターでもありますが、そういったご自身の立ち位置をどのようにとらえていますか。
white noise white wave 2010

White Noise White Wave 2010

O : Otograph自体、2人でのコラボレーションなので、外部とのコラボレーションもそれほど違和感なくできるところはあります。『PJM』では最初は森のステージ画面と基本的なゲームコンセプトだけを聞いて、主人公のデザインもないようなところから音楽を作りはじめました。その時はアーティストとしての自主性を尊重しもらえたので、こちらも自由に作ることができました。音楽とゲームを同時進行で制作し、よい相乗効果が出せたんじゃないかと思います。先日展示した『WNWW』もある意味、街の風景とのコラボレーションです。『PJM』を制作しているとき「音楽によってゲームのステージの印象が大きく変わる」ということもありましたが、『WNWW』では現実の風景の印象を自分達の表現を使って変化させたり、そこから違うものを感じたりしようとしたのかもしれません。
& : 活動全体を通して"ポピュラリティ"と"クリエイティビティ"がうまく共存しているように感じますね。
I : 例えば、ゲームのサウンドトラックを通しては普段アートに興味のない人ともつながりますし、ギャラリーでインスタレーションする場合は、偶然通りがかった人に感覚を伝えるような楽しさもあります。継続して作品を作り続けるには外から入って来る情報に対するフィードバックも必要になるし、そこには自然とポピュラリティも含まれるんじゃないかと思います。クリエイティビティとのバランスを取ることが必要ですが、自分たちのモチベーションを保ち続けるためにどちらも大切にしています。その結果として変わりゆくもの、変わらないものとして自然に流動しているような気がします。私たちにとってその二つは分けることができないものなので。
& : 両立できているということはすばらしいことだと思います。バランスを崩しているアーティストもいますよね。
I : 僕らも頭で考え過ぎてしまったりするとバランスを取るのが難しくなります。
O : あとは人の考えに左右されたりすると…。
I : 人の考えに左右されたり、人の反応を気にしすぎてしまうと、どうしても揺れてしまう部分もあると思うんですよ。Otographは2人でやっているから、どちらかが道を外してしまうともう一方がちょっと引っ張ったりします。
& : 作品を制作するうえで、「他者との距離の取り方」がうまいという印象はありますね。
O : 意図的に距離はとっているんですけど、とりすぎている部分もあります(笑)。
I : 音楽を聴いてもらった人、作品を見てもらった人に、「こういうふうに感じた」というちゃんとした反応を伝えてもらえているので、そんなに距離を取り過ぎているということもないとは思います。
O : ただ、そんなに上手とは思っていないです。すごく遠すぎるか、すごく近すぎて恥ずかしいとか、そんな感じはしますけど(笑)。
I : コントロールしたいとは思っています。人の心に入りながらも、冷めた視点で作品を作るということは今よりもっとできると思います。
O : そうしたいと思っているから作り続けているのかもしれないですね。

京都について - 純粋に自分たちの才能や能力などを高めていこうという人が多い

& : 先ほども少しお話に出ましたが、2009年に京都のゲーム会社Q-GAMESの『PJM』のサウンドトラックを担当したときは、どのようなプロセスで実制作しましたか。
I : 最初に「あのアルバムのこの曲みたいな雰囲気で、四季を表現したようなものを作ってほしい」と言われて4曲制作しました。
O : 「もっと増やした方が」という話になって最終的には20曲以上制作しました(笑)。
I : 始めの方だと、先に「こういう効果音」という指示書きをいただき、それを元に音を作って渡したりしました。後の方になると、先に映像で動きを見せていただいたうえで指示をいただいたり…色々ですね。
& : サウンドトラックが発売されたのはどういった経緯だったのでしょうか。
I : ソニー・アメリカがちょうどPlayStation Networkで数タイトル、オーディオの発売をする用意をしていたらしくて『PJM』のサウンドトラックもその中に入れようということになったらしいです。
O : PlayStation Networkの掲示板があるのですが、その掲示板で『PJM』のサウンドトラックに対する反響があってそういう運びになったようです。担当者の方に『PJM』のサウンドトラックを携帯電話の着信音にしていていただいたそうです(笑)。
& : 京都で作品を発表することが多いですが、京都のアートについてどのような印象を持たれていますか。
O : 京都は人とのつながりが豊かなので、他の都市に比べると制作活動などをしやすいですよね。そこに土壌があるというか。

& : 京都の街の魅力はなんでしょうか。
I : 風景も歴史も食べ物も全てが味わい深いところですね。
O : 制作に行き詰った時、ちょっと出かけたらいい場所がたくさんあります。最近大阪に引っ越したのですが、井浦は京都出身でずっと住んでいました。私も大学からずっといたので長いんですよ。
I : でも京都を出てみると京都について知らないことがいっぱいあったんだなと思いました。以前は外ばかり見て、あまり京都を見ていなかったのですが、最近住まいが京都を離れて、若干印象が変わって来ているかもしれないのです。住んでいるときには「いつでも行ける」と思って知ったような気持ちでいたのですが、離れると「行っておけばよかったとか」、「また行きたいとか」思う場所がたくさんあります。あとは、京都は純粋に自分たちの才能や能力などを高めていこうという人が多いと思いますね。
O : いい意味でマイペースだなと思います。
Otograph

社会について - 作品を制作して「社会」と関わっていくことが今はとても大切

& : どのような人にOtographの音楽を聴いたり、作品を見たりしてほしいですか。
Variations 2007

Variations 2007

I : 基本的には「多くの人に見て欲しい」と思うのですが、インスタレーションなどでは観賞者にある程度の理解や忍耐を求める作品もあるので、作品によって異なります。
O : インスタレーションでは、自分たちが体験したことを、また違った形で体験してほしいと思っている部分もあるので、時間をかけて見ていただきたいと考えています。
& : ギャラリーはある程度知識を持った方が多く来られますし、そういったところで『WNWW』を展示したというのは場所に適した展示でしたね。
O : ギャラリー入り口から見るとディスプレイが後ろ向きに並んでいるので、来られた方に拒絶した印象を与えないかと心配でした(笑)。
I : 現代美術家で友人の岡田一郎君と展覧会コンセプトを話していて、外の景色と映像とを同時に見せるアイデアの助言をもらいました。それから、あの空間にしっくりくる展示台を発注して制作してもらったんです。
O : あの場所ではそれがうまくいったようなのですが、例えばあの作品を美術館などで展示するのであれば、もっと大きな画面にしないといけないと思います。同じ作品でも、見せ方を変えながら制作していけたらおもしろいと思います。

& : 今までたくさんの作品を通しての関わりをしてきたと思いますが、井浦さん、大島さんにとって「社会」とはどのようなものでしょうか。
White Noise White Wave 2010

White Noise White Wave 2010

I : 以前は「自分達の見たいイメージや聴きたい音楽を作る」ということに集中していたので、自分たちを取り巻く環境をあまり意識していませんでした。それが『PJM』の音楽制作をしたあたりから、世界各国から反響があって、ネットやメールを通じて作品に対する意見が寄せられるようになりました。その時により広い「社会」につながった気がしました。先日の展示などでも、見に来られた多くの方に直接お会いして、私たちの視点を提示することで、ダイレクトなコミュニケーションをとることができたというふうに思っています。作品に賛同する人や、色々な才能を持った人に出会えましたしとてもよい経験となりました。
O : そういった経験を通して、まるで1次元から2次元に、そして3次元へと自分を取り巻く世界が変わったという実感がありました。作品を制作して「社会」と関わっていくことが今はとても大切だと思っています。
& : 社会においてアーティストは、どのような役割を持っているとお考えでしょうか。
I : 基本的にアーティストは社会から一歩距離をとって個人の視点からの表現を大事にするもの、と思っています。でも、社会に対して発表する意義のあるものでなければアートではないというふうにも言えるとも考えています。

今後の活動について -人間の心の動きといったものを、音や光の揺らぎに反映させる

& : 今後どのように自分の作品を展開していきたいですか。
I : まずは先日展示していた『WNWW』を違う土地で展示したと思っています。そうすることでまた別の風景が見えるのではないかいうのを考えています。この作品自体ART SPACE NIJIに立ち寄った時に得たインスピレーションを元に制作したので、ある意味サイトスペシフィックアート(※3)のようなものです。もともと京都は山と平野に囲まれた海がない都市で、そこに海の景色を作ることで、人間のイマジネーションが現実の空間にどれだけの影響を及ぼすことができるかということを試す実験だったと思うんです。

また違う街では、どのようなイメージが作れるのか、また海を作るのであれば、どんな海が作れるのかというのを私たち自身も見てみたいと思います。またその展示空間の地理的環境などの条件に合わせてプログラミングをし直して、さらに展示空間とその環境に合わせたダイナミックな変化をもたらしたいと考えています。あとは、人間の心の動きといったものを、音や光の揺らぎに反映させるようなインスタレーション作品も構想もしています。

(※1)PLAYSTATION3、PSPで展開しているネットワークサービス。参加するとPlayStation Storeでの、ソフトウェアのダウンロード販売等サービスなどを受けることができる。
(※2)プログラミングによる機械制御のこと。コンピューターミュージックでは録音・再生する演奏情報のこと。
(※3)特定の場所に存在するために作られた作品。



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