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花岡伸宏

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INTERVIEW WITH HANAOKA NOBUHIRO 2009.12.7

作品について 面白いというだけじゃなく、見た後に“しこり”が残るようなもの

&ART(以下、&) : 京都精華大学では立体造形を専攻されていたそうですが、在学中はどのような作品を制作していましたか。
花岡伸宏(以下、H) : あまり変わっていないですね。自由に作っていました。現代美術というのを当時はあまり知らなくて、先生や先輩などの作品の雰囲気を見て「こういうものを作ったらいいのか」と(笑)。
& : 在学中はご自身の作っているものが「美術かどうか」ということはどのように捉えていましたか。
「After School・放課後の展覧会」展示風景

「After School・放課後の展覧会」展示風景

H : 当時は美術をするというよりも、工作や、小学校の図工の延長線上という感じでしたね。美術をあまり意識していなくて、ギャラリーで発表している人を見ると「ませてる人がいるなぁ」というふうに見ていました(笑)。本当に全く切り離されていましたね。
& : 現在ではグループ展や、公募コンペなど様々な形式の展示に積極的に参加していますね。意識が変わったのはいつ頃だったのでしょうか。
H : ずっと京都精華大学の立体造形の中で制作していたんですけど、大学院くらいから洋画、映像、漫画など、他の学科の学生と交流するようになったんです。その時の分野を乗り越えた交流があったのが、最初のきっかけですね。またART CAMPなどの展覧会で、他大学の学生と知り合ったことも、すごく刺激になりました。
& : 基本的にはいい意味で工作というイメージは変わらないんじゃないでしょうか。ギャラリーで展示していたとしても、「ませていない」印象を受けますね(笑)。現在のような作品の見せ方になった経緯をお聞かせください。
H : 大学のときは吉田戦車、和田ラヂヲなどの、シュール系のギャグ漫画が好きだったんです。当時はそういったところから発想を得て、それを立体物にする、というふうに作業がマニュアル化されていたんです。でも最近はそういった表面的なことじゃなく、心の奥というか、そういったことを追求したいと思っています。面白いというだけじゃなく、見た後に“しこり”が残るようなものは作りたいですね。
花岡伸宏さん

& : 「緑の積み木は上昇する」での人物などのタッチは90年代以降ではないですよね(笑)。さっきここに来る途中で、京都大学の吉田寮の前を通ったんですけど、花岡さんの作品にはああいった昭和の趣を感じさせる部分がありますね。
「緑の積み木は上昇する」 2007

「緑の積み木は上昇する」 2007

H : そうですね、そういう古いテイストが好きというのはありますね。雑誌の “VOW”に出てくる変な看板とか、チラシの投稿があるじゃないですか。あの辺の煮え切らない感じにインスピレーションを受けている部分はありますね(笑)。色々自分でも分析したんですけど、そこで完結しているものではなくて、“VOW”のように「これは一体どんな脈絡があんだろう(笑)」というように、意味やつながりを把握できないものにすごくグッとくるんです。人ってそういうものを見たときに、頭の中で色々な文脈を持ってきて、理解しようとするじゃないですか。「それが通用しないもの」というのは自分でも意識して作っているところはありますよね。
& : なるほど。モチーフには飯、おじぎ、バネ、仏像、など同じものが繰り返し登場しますね。
「バネの引っ張り」 2008

「バネの引っ張り」 2008

H : モチーフとしては、その存在自体が面白いものを選んでいることが多いように思います。お寺に置かれている仏像って、よく見ると気持ち悪いんですよ(笑)。手が異様に長かったりとか、顔の形がのっぺりしていたり、頭のイボなんかすごく卑猥(ひわい)な感じがして(笑)。あんなところに置かれているのに「真剣じゃない」という印象がして、すごいギャップがありますよね。バネも伸びたり縮んだり、なんか笑ってしまうんですよね(笑)。びっくり箱が伸びきった時のあのだらしない感じとか、そういうところにモチーフ選びのポイントがありますね。
& : 飯も多いですよね(笑)。
「ずれ落ちた左肩は飯に刺さる」 2009

「ずれ落ちた左肩は飯に刺さる」 2009

H : 食べ物って本来大事なものじゃないですか。飯は普段から見慣れているものだと思うんですけど、そういうものが、赤ちゃんのほっぺたについてたり、床にべちゃって落ちたり、壁に広がったりしていると、いつもと違う風景になるというか(笑)。モチーフが強い意味を持っているものなので、逆に崩しやすいというのはあります。ただ制作に関して言えば、最近はもっと自由に作品を作りたいと思っています。人によっては僕の作品はコンセプチュアルに見えて、「すごく考えて作っているね」という感想を持つ人もいるので、もっと「感覚的に見せたい」というのは考えています。

京都について 学生が多いから活気がありますし刺激になりますね

& : 広島のご出身だそうですが、なぜ京都精華大学を選んだのでしょうか。
H : 高校生の時にとりあえず広島から出て関西に行きたかったんです。それで関西の大学に行こうと思っていたのですが、あんまりが勉強が得意じゃなく、「勉強ができなくても入れる美大っていうのがある」ということを聞いたのがきっかけです(笑)。絵を描いて大学に行けるんだ、と(笑)。
& : シンプルな理由ですね(笑)。現在も京都にお住まいですがアトリエも京都でしょうか。
「飛び散る飯と女と30円」 2009

「飛び散る飯と女と30円」 2009

H : 仁和寺あたりに大学の先輩と3人共同でアトリエを借りています。前まで僕の作品の素材はFRP(繊維強化プラスチック)などだったのですが、先輩の1人が木彫や木工をやっている影響で最近は木を素材にするようになりました。

& : 影響を受けたり、共同で何かするという意味では、京都はアーティストが多いですし、なにより住みやすい環境ですよね。
H : 学生が多いから活気がありますし刺激になりますね。いつも百万遍の居酒屋で飲むんですけど、そこで京大生などに話しかけたりするんです。大体眼鏡をかけた、頭ぼさぼさの「まさに京大生」って感じの人とマニアックなことを話しますね(笑)。この前喋ったのは、生物学でドブネズミの一種の生態を調べている人だったんですが、話を聞くと違う世界が広がっているというか(笑)。美術なども他の分野の人から見ると同じような印象かもしれないんですけど、専門分野ですごくピンポイントでひとつのことを追求している人に出会うとやる気が出てきますね。僕も「もっと追求してもいいんじゃないか」という気持ちになります。
& : 学問は具体的に社会に還元できる可能性を持っている領域ですし、美術とは社会への還元のされ方に違いがありますよね。
H : 生物学などは追求すれば、新しい細胞を見つけたりとか、街の発展に繋がる可能性もあるんですけど、美術となると追求した先にあるのは物質ではなく思想的なものですよね。

社会について 自分の作品に対する様々な角度からの意見を聞きたい

& : 花岡さんはどのような人に自分の作品を見てほしいですか。
H : 色々な人に見てもらいたいですけどね、子どもから…政治家とか
& : 政治家(笑)。鳩山首相とかですか?
H : 鳩山首相とか(笑)。あとは何かの博士だったり(笑)。
& : ネズミの研究者もそうですね。
H : そうですね、色々な人に出会うたびに、その人たちに見せたいというのもありますし、自分の作品に対する様々な角度からの意見を聞きたいんですよ。色々な機会に発展する可能性があるので、ギャラリーの方や、キュレーターの方に見てもらたいとも思いますが、「純粋に作品を見せたい人」となると、「特定の人」というのはあまりないですね。
& : 先ほど「美術となると物質ではなく思想的なもの」というお話がありましたが、そのあたりも含めて、花岡さんが考える「美術にできること」とはなんでしょうか。
H : 個人的なレベルで言うと「この感覚を伝える」というか…。言葉などで伝えられないこの「煮え切らない感じを伝えていく」ことによって、見た人の中の今までになかった感覚を刺激したいと考えています。その人の感覚に釘を差して「こういうものがある」ということだけを心に残せたらいいかなと思います。

& : 花岡さんが活動している上で「社会とつながっている」という実感はありますか。
H : 社会とは初めは全然つながらないことをやっているんだなと思っていたんですけど、美術館などの公共の場で発表すると自然に社会とつながるじゃないですか。作品を作る時点でつながろうっていう意識はないんですけど、作品が完成して、手を離れたときに自然に公共の場に出て社会とつながるというイメージはあります。一般の人の目にも触れ、それで色々意見をもらったりというのもつながっているなと思います。作品を介してコミュニケーションはとれますし、それは一番大きいと思います。
花岡伸宏さん


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