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Antenna

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INTERVIEW WITH  ANTENNA 2010.07.28

Antennaについて - 自分たちが考えていることを、どのように反映させてその場を作るか

&ART(以下、&) : これまでに様々な活動を行ってきていますが、Antennaの活動内容について簡単にお聞かせいただけますでしょうか。
「ウツ世ノ門」 2010

「ウツ世ノ門」 2010

田中英行(以下、T) : 一言でまとめると、「場を作る」ということをやっているんだと思います。作家としてはインスタレーションの制作を中心に活動しているのですが、一つひとつものを見せようとしているわけではなく、その場全体を作り上げていくことにベクトルが向いているんです。
市村恵介(以下、I): もちろん一つひとつの作品をおざなりにしているのではなくて、それぞれを仕上げるということも重視していますが、それが最重要ではないですね。
T : オルタナティブスペースを運営したり、アートプロジェクトを立ち上げたりということまで考えていくと、活動を通して社会的な構造に働きかけている気もしています。「社会の仕組みなどを作品として目に見える形にするのか」「企画や展覧会を作ることで人の動きを作るのか」という方法の違いがあるだけで、展示も含めたそれぞれの活動に対して同じような意識で取り組んでいます。
& : 例えば展覧会を行うときに、どのようにプランニングを行っていますか。
古川きくみ(以下、F) : 最初は絶対に会場の下見を行うんです。そのときに、会場を見ながら頭に思い浮かべたものを、簡単なスケッチを描くなどしてシミュレーションします。ただ、そうやって事前に準備したとしても、現場に入って設営し始めると、ガラッと変わることは多いですね。現在開催中のさいたま市プラザノースでの個展『ウツ世ノ祝宴~Utsuyo no Shuen』での展示では、大きい門のような作品を作ったのですが、はじめはそこにスクリーンを張って新作の映像を投影しようと思っていたんです。でもそれだと門をくぐれなくなってしまいますし、 「そこに映像があるということよりも、門をくぐるという体験の方がいいのではないか」という話になって現場で判断して変更しました。その場所での実際の体験を重視しているんです。
I : 展覧会の予定が決まっていない状態での、普段のミーティングでも、「それぞれが何を思っているのか」という、深度のある話がコンスタントにできているんです。展覧会のためのプランニングも行うのですが、どちらかと言えば、今までのミーティングなどで積み重ねてきたことから、アイデアを引っ張ってきて、その場で組み立てていくような感覚は強いと思いますね。
市村恵介さん

& : 活動初期からそういったプランニングを行っていたのでしょうか。
T : 2006年くらいまでの展示は「作ったものを会場に持ち込み、それをどう見せるか」ということを考えていたんです。しかし、最近は主に「自分たちが考えていることを、どのように反映させて場を作るか」ということを意識しています。Antennaの作品には「現代と過去をどう繋ぐか」ということがテーマとしてあるのですが、例えば今年Antennaが参加する、『BIWAKOビエンナーレ2010』というアートプロジェクトが行われる場所は、現代の生活から取り残されてしまい、時間の流れの外側にあるようなものがたくさん存在するところなので、「長い時間を経ている場所とどのように作品を、関連させていくか」ということを意識して展示を組み立てようと考えています。会場、その場にいる人たち、その場所周辺の建物などを見ながら、肌で感じたものをどのように作品に落とし込んでいくかを考え、プランニングしていくようなイメージですね。その過程ではメンバー間で具体的な言葉は交わさず、すごく抽象的なニュアンスでやりとりしながら、詰めていきます。
F : このメンバーに固定してからもう長く、多くの体験を共有してきているので、過去の体験をもとに話ができるんです。なので、最近ではあまり事細かに説明しなくても、お互いが考えていることがある程度分かります。どのくらい伝わっているかも、相手の顔色や反応を見ているとわかるんです。
& : 制作の際、3人はそれぞれどういう役割でしょうか。
個展「トコ世ノシロウツシ」展示風景 2009

個展「トコ世ノシロウツシ」
展示風景 2009

F : 最近はそれぞれがバラバラの意見やイメージを出しても、全員が自然に近いところを目指しているということが多いですね。ディティールの話になったら、意見がぶつかることもあるのですが、そうなった時は「現場を見てから決めよう」という話になります。役割をちゃんと説明するのは難しいですが、アイデアを出すのは田中が多いです。あとは、アイデアが市村の琴線に触れるか触れないかで大まかな方向性が決まることはよくありますね。私は自分からはあまり意見を出さないのですが、3人の中ではなんとなくバランスを取りながら、ちょっと引いて見ている感じです。
T : 昔は皆それぞれ違うことを言っていると思っていたのですが、「違うことを考えているのではなくて、大体同じことを話しているのだけれど、言葉への変換の仕方や、それに対する見解が違っているだけで、同じようなところを見ているのかもしれない」と思えるところに長い時間をかけて歩み寄ってきたんです。
F : 必要以上に自己主張をしないようになりましたね。
T : Antennaの活動は、今の日本で生きている自分たちと、様々なものの関係性という、大きなテーマが根っこにあるんです。同じ世代に生まれてきたのならば、大体同じような境遇で生まれ育っているので、深めていくことで同じところに行き着いたのではないかと思います。
& : メンバーがどのような関係性かというのは作品に影響しますよね。
T : 例えば僕がたまたま作品の重要な部分を忘れたとしても、その部分が抜け落ちたままの時もあるし、他の2人がフォローする時もあります。そういった何とも言えない関係性の中で偶然積み上がっていく積み木のように作品ができていくんです。でも作品として成立しないところまでクオリティーが落ちそうになると、全員がキュッと集まってフォローします。積木が落ちたとしてもいいところに落ちればほうっておくこともあるし、いいところに落ちない場合は、誰かが拾い上げるという奇妙な積木遊びという感じです。

コンセプトについて - 時代が変わっても変わらないものを見出すこと

& : 改めてAntennaの活動のコンセプトを教えていただけますでしょうか。
T : 一番大事にしているのは、時代が変わっても変わらないものを見出すことと、そういったものについて考えることです。今の時代を読み解きながら、変わらない何かを作品で引っ張り出そうとしているんだと思います。ただ、人が人を殺すというのも、歴史の中で変わらないことですが、Antennaの3人が共通して思っているのは、時代が変わっても変わらないものの、いいところをつなげていきたいということですね。
& : 時代が変わっても変わらないものを扱う時、多様な表現方法がありますよね。
「浮身ノ塔」 2007

「浮身ノ塔」 2007

T : 日本人の伝統的な世界観に、晴(ハレ)と褻(ケ)というものがありますが、昔の日本の農村で言えば農作業を行う日常が褻で、お祭りが晴だったと思うんです。例えば晴を現代の日本に置き換えると、夏フェス、遊園地、ショッピングモール、クラブなどの、たくさんの人が集まってテンションが高くなるような場所や機会だと思うんです。昔のお祭りと現在行われている夏フェスなどは、広い範囲で捉えれば、同じ種類のものではないかと考えています。現代においてお祭りを行うとしたら、御輿(みこし)に何が乗った時に、日常から逸脱する瞬間が生まれるのか、ということは制作するうえでイメージしています。
& : そう言われれば、Antennaの作品から晴と褻の構造をダイレクトに感じますね。
T : 現在のメンバーでやり始めてから、全ての展覧会の構造に、「世界のあっちとこっちを行き来する」という要素が入っているんです。今回の埼玉での展示も、入口側にクラッカーやご祝儀袋など、誕生日や結婚を祝うようなめでたいものを飾って、それを通過すると葬儀で使うようなものが並んでいるという構成にしました。Takuro Someya Contemporary Artでの個展「トコ世ノシロウツシ」の時も、2階建ての建物の1階部分が現代の社会で、階段を上がってあの世側に行くという位置関係で展示を構成しました。そのように、順路を巡って展覧会を見ていただくことで、展示を通して「生まれて死ぬ」という構造を体験できるということを意識しています。例えば日本の伝統的なもので言うと、鳥居をくぐったり、橋を渡るなど、世界の境界線を超える体験が参道に組み込まれているという点で、神社はよくできていると思うんです。他にも送り火により魂をあの世へと送り出すとか、例えば流し灯篭(とうろう)の場合でも、川の循環はどこかあの世と繋がっているというイメージがあるじゃないですか。そういった人の意識の中に生まれる前からにあったような感覚を、展覧会の中に組み込んでいきたいですね。

& : アートは陰の要素も作品に出るので、夏フェスやテーマパークなどと比べ、晴の在り方と効果が特殊だと思うんです。Antennaの作品の作り方は、陰の要素をあえて取り入れることで、「幸せとは何か」を考える機会を作るところから取り組んでいるように見えますね。
T : 「幸せと同じくらい不幸が付いて回る」というのは、様々なものごとにおいて大前提だと考えています。光を当てれば必ず影が落ちるように、相反するものが同時に共存している関係が、どんなことにも当てはまると思います。
I : そういったものは両極端のようなイメージがあるけれど、常に背中合わせなんじゃないでしょうか。
F : それも相対的なもので、常に変化していくものと捉えています。世の中のものごとには、優越がついたり、ヒエラルキーがあったりしますが、それは絶対ではないですし、「そっちの視点からだとそう見えるかもしれないけれど、こっちから見ると違う捉え方もできる」という価値の提示をしたいと思っています。
& : Antennaのコンセプトの根底には、現代の社会に対する問題意識もあるように感じます。でも、完全に一方向の立場からそういったことを非難しようとしているわけではなく、批判と肯定が入り混じっているようなスタンスをとっている印象を受けます。混ざりきらないマーブルな状態が作品に出ていますよね。
I : 偏った視点で作品を作りたくないという気持ちはあります。白か黒か決めるのではなくて、グレーの幅が無限にあるという感じです。
T : それはすごくアジア的な在り方かもしれないですね。どこまでもグレートーンで、それもグレーという色が塗られているのではなくて、白と黒の細かい点がたくさんあって、距離をおいて見たときにグレーに見えるだけ、というようなイメージかもしれません。
田中英行さん

京都について - 京都そのものを作品にしているのではないかと思っています

& : 8月より京都のアートの全体像を見渡すことができる機会を作りだし、様々な施設、団体などの連携を目指すプロジェクト『京都藝術』を実行委員として運営されますね。このプロジェクトはどういった経緯でスタートすることになったのでしょうか。
F : 京都にはもともとギャラリーなど、アートに関する色々な場所があります。しかし、今までそれぞれの場所同士が狭い街にありながら、関わる機会がなかったと思うんです。
T : 個々ではいい動きがたくさんあるので、それらを全体の動きとして見せる瞬間があってもいいのではないかという話になり、今回のプロジェクトを企画しました。
F : 現在日本のアートは東京が中心になっているのですが、歴史の中で蓄積されてきた時間は京都の方が圧倒的に長いと思うんです。京都には世界に発信していけるくらいのポテンシャルが備わっているのに、それを発信する機会がなかっただけではないかと考えているんです。そういったものを外に向けて発信していく機会を作りたいと思っています。
T : また「消費されないアート」ということについて、京都から考えたいとも思っています。東京では消費の中にアートがあり、消費の構造とアートが重なっている傾向があると思うんです。でも僕は消費の構造とはちょっと違うところに、アートの真理がある気がしています。そういったことを踏まえたうえで、歴史とともに成熟してきた京都という街で、たくさんのアートが生まれているという状況を、もう一度みんなで見つめ直すべきなのではないかと思っています。

& : Antennaが京都で活動している理由はなんでしょうか。
T : そもそも先ほどお話しした、「時代が変わっても変わらないもの」を作品にすることとなったきっかけは、Antennaが京都にいたからだと思うんです。1000年、2000年の歴史を持つ建物と、2、3年で変わってしまうコンビニや空き店舗などが、狭い中に同時に存在し、循環を繰り返している都市というのはかなり特殊なのではないでしょうか。そう考えると、Antennaは京都そのものを作品にしているのではないかと思っています。
I : あとは、たまたま僕らが京都にいたから、今この状態にあるというのも大きい気がしています。僕らが京都を選んで活動を始めたわけでも、拠点を移して京都にいるわけでもないですし、捉え方によっては京都に引っ張られて、今の状態にあるのかもしれません。
Antenna

社会について - 社会全体の中でアートができるいいことを積極的にやりたい

& : どのような人にAntennaの活動を伝えたいですか。
I : すべての人に受け入れられることを意図して、作品を作っているわけではありませんが、みんなに伝えたいと思っています。今ここにいる人、Antennaのアトリエのご近所にいた人たちなどの今まで関わってきた人も、まだ関わったことのない人も含めたみんなに伝えたいですね。
& : 例えば見る人を選ばなくても、自然に見る人が限定されてしまう場合もありますよね。
F : 様々な人が生きていている社会の中で、アートにできる役割があると思うんです。アートのためのアートになるのではなく、社会全体の中でアートができるいいことを積極的にやりたいという気持ちはあります。
古川きくみさん

& : Antennaの皆さんにとって社会とはどのようなものでしょうか。
F : 人が共に生きていく場所ですかね。
T : 社会に接続する瞬間は点でしか関われないと思うんです。自分が作品などで、社会に接続しようとすることは、点で結合されていくような感覚なのですが、でも目の前にある点だけを意識していては、全体的な変化を考えることができないんですね。「社会と作品と自分」ということを考えたときに、全体を意識したうえで、点の接続をすることが大事だと思います。アーティストがやることが、社会の中でどういった位置付けで必要なのかということは、見えにくいと思うんです。でも点と点の接合が、世の中が良くなるための、ささやかな一手になるということは信じています。
& : 例えばAntennaの考える、世の中が良くなる変化というのはどのようなことでしょうか。
T : 社会の中で「正解が一つで、他がすべて不正解」という状態が色々な場面である気がしているんです。幸せは何かという問いに対して、一人ひとり全く別の答えが返ってくる状態が自然なはずなのに、「幸せはこれです」という一つの答えが提示されてしまうような現在の状況を、既存の価値そのものをもう一度相対化することで、変えていくことができるのではないかと思っています。そのためには「答えを見せるために作品を見せる」のではなく、「答えが無限にあることを提示するために作品を見せる」という意識で取り組んでいきたいと思っています。作品だけではなくアートプロジェクトの運営をしている時もそういったことを考えています。


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